講談師・神田陽司のテキストブログ


by yoogy
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【執筆日記】


c0111096_17143049.jpgあと12時間で一本。

「レ・ミゼラブル」とだけ演題を出している14日(土)の本牧亭で書き下ろしのネタ下ろし。もちろん原稿料はどこからも、誰からも出ない。普通はお客様の御祝儀があるのだろうが、ものすごく御祝儀となじまない芸風だし、何より書けるかどうかわからないものに「面白いからおいでください」といまだに言えないでいる。

せめてネット上で宣伝だけでも、と思ったが、ルーターを買い換えたせいかサイトの更新ができない。

「目や耳を澄ますといいのだが、壊れている時には新しい音が聞こえる。兆しが見える」ホントか? ホントだな? 神足祐司さん。

・・・・・
更新できました。「プリントアウトでも割引OK!」と入れようとしたところでまたつながらなくなりました。
http://www.t3.rim.or.jp/~yoogy

うわー! もう10時間くらいしかないよ!
(徹夜はしない方針なので)(徹夜オーケーになると本当に際限がない、どこまでも「原稿の完成は半分以下」というポリシーを曲げるべきではない)。

http://www.t3.rim.or.jp/~yoogy/8madore.htm
の続きの部分の予定です。
前作は「すべての偽証者に捧ぐ」の副題からわかる通り、耐震偽造の裁判あたりで作ったようです。龍馬を書くにしろ、師匠(二代目山陽)の後を受けて「レ・ミゼラブル」を潤色するにしろ、そのときどきの時事問題を普遍化することでしか新作を書きません。そんなものは三日で古びると心得て、書くのに三日以上かけてはいけない、というのが理想ですが、たいてい一カ月かけてしまいました。

先日の両国の講談倶楽部で「昼から書いて夜にかける(無本で)」をやりました。私の講談はそれでいいのです。それでいいから、とにかく書かなくてはなりません。

『レ・ミゼラブル』はミュージカルとして有名ですし、私も一種の娯楽歴史モノ、程度に認識していたのですが、松岡正剛氏の褒め方といったら・・・

http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0962.html

↑「ユゴーという表現者はいったいどこまで凄いのか、どこまで“知っている”のか」これは原作を読んでみると実感できる。たとえば前回の、ジャン・バルジャンが己のすべてを捨てて見も知らぬ一老人のために正体をあかすため裁判所へ急ぐシーン。これでもかこれでもかといわんばかりに「偶然」は彼が裁判所へ辿り着くことを邪魔する。いつでも「これは神の意志だ、自分はマドレーヌ市長として人々を幸せにすべきなのだ。路傍の、役にも立たぬ老人など無視すればいいのだ」と自分を欺けるチャンスを与えられる。しかし、彼はそれが神ではなく悪魔が与えたチャンスであることを最初から知っている。

「光と闇の対決」にはもう胃薬がほしいくらいに飽きているのだがこの葛藤の面白さは凄い。正直原作は「字が細か過ぎて」とてもイッキに読めるシロモノではないのだが、講談化することでそれを読んでいくというのも悪くない。こういう趣味的なことをやっているから・・・・・・・。

今回はすでに他の講釈師がやっている「コゼット」の寸前のシーンになるはずである。はずだろう。はずなんだけど・・・。

・・・・・
と、ここで写真アップ。
マア面白ひ。四冊の訳書の、訳者が違うのは当然なのだが、本の大きさが見事にそろった。上から
佐藤朔、豊島与志雄、黒岩涙香(!)、清水正和訳である。

師匠・二代目山陽の原稿にははっきりと「黒岩涙香訳・神田山陽潤色」とある。涙香訳は二年前に復刻したばかりで最も講談に近く原文にはないセリフが加えられていたりする。このノリをベースとして絵画でいう消失点に向かって膨らませるのがいつものやり方。だが、原文の豊かさも忘れてはならない。

新潮文庫版にのみ、ジャン・バルジャンが作業をしていた軍艦の戦歴が書かれている。1823年にその船が参加していたスペイン戦争に対して「デモクラシーの息子であるフランス兵士の目的は、他人に課すべき束縛を獲得することであった。忌まわしい矛盾である」。涙香訳が存在すれば「この船は平和のための戦より戻れり。されど他国より平和を奪えり」とでもするのだろうか。

これを現在の世界情勢にかけることはたやすいが、ジャン・バルジャンの不幸を追う上での重要なファクターとは思えない。

【すいません、完全に個人的な「覚書」です】今後【】で囲まれた日記のタイトルにはご注意ください。
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by yoogy | 2007-04-10 17:10